交通事故による『高次脳機能障害』は弁護士法人心まで

「高次脳機能障害の損害賠償金(示談金)」に関するお役立ち情報

高次脳機能障害と将来介護費

  • 文責:弁護士 上田佳孝
  • 最終更新日:2021年1月22日

1 将来介護費とは

交通事故により、高次脳機能障害が残った場合には、第三者による介護なくして日常生活を送ることができなくなることがあります。

このように、将来にわたって介護が必要になる場合に要する介護に関する費用を将来介護費といいます。

2 将来介護費の相場

一般的には、医師の指示又は症状の程度により必要があれば将来介護費の賠償が認められます。

金額の相場として、介護ヘルパーなどの職業付添人を利用する場合には、その実費とされ、近親者付添人(家族や親族の付添い)の場合は1日8000円が相場といわれています(民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準)。

もっとも、具体的な介護状況などによって、日額が変わることがあります。

3 将来介護費の算出方法

将来介護費は、一般的には、日額×365×平均余命までのライプニッツ係数により算出します。

たとえば、令和2年4月1日より前の交通事故により平均余命まで20年間介護が必要となってしまった方の場合には、8000円×365日×12.4622(20年に対応するライプニッツ係数)=3638万9624円になります(事案の内容などによって金額が異なることがあります。)

4 裁判例

後遺障害等級第2級が認定された高次脳機能障害の主婦につき、更衣動作、入浴動作、歩行などについて大部分の介助が必要とされ、認知、情緒、行動障害の症状からみて、ほとんどの部分での他人の介助が必要であるから、随時介護を要するとして、症状固定時から3年は夫による介護、それ以降は職業介護人による介護とし、近親者は日額8000円、職業介護人は日額1万2000円として、合計約5357万を認めたものがあります(神戸地判平成28年1月18日)。

5 定期金賠償

定期金賠償とは、将来介護費などを、一時金として賠償を受けるのではなく、毎月、定額の賠償を受ける方法を、いいます。

定期金賠償は、中間利息が控除されません。

そのため、前記の事例では、8000円×365日×20年=5840万円の金額を受け取れる可能性があります。

もっとも、具体的な介護状況等によっては金額が変動する可能性があるため、必ずしも一時金賠償よりも金額が増えるとは限らないことに注意が必要です。

6 将来介護費については弁護士に相談すべき

将来介護費は、後遺障害の内容や程度によって、認定されるケースとされないケースがあり難解な分野です。

将来介護費の日額が少し異なるだけでも金額が大きく異なることもあり、かつ、一時金賠償にすべきか、定期金賠償にすべきか、など考えるべきことが多いです。

そのため、一人で悩まずに、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

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高次脳機能障害で将来介護費が認められるケース

  • 文責:弁護士 上田佳孝
  • 最終更新日:2022年1月18日

1 高次脳機能障害に対する特有の介護

高次脳機能障害と認められた場合でも、その障害の程度は、重いものから軽微なものまで差があります。

そして、高次脳機能障害に対する特有の介護として、「被害者に対する見守り」「声かけ」について、将来介護費が認められる場合があります。

2 自動車賠償責任保険における後遺障害等級と、これに基づく将来介護費の認定について

⑴ 自動車賠償責任保険(以下「自賠責」といいます。)には後遺障害等級についての表が定められています。

そのうちの別表Ⅰに該当するとされた場合には、常に、あるいは随時介護を必要とする後遺障害と認定されたものであることから、将来介護費も認められることになります。

⑵ 一方、高次脳機能障害による後遺障害は認められるものの、別表Ⅰに該当しないものとされた場合には、別表Ⅱのうち、

3級3号(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの)

5級2号(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの)

7級4号(神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの)

9級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)

のいずれかに該当することが一般的です。

そして、これらに該当した場合、介護が必要とされる⑴の別表Ⅰには該当しないことから、介護の必要性が問題となります。

⑶ 従前の裁判例の傾向を調べた文献(令和2年損害賠償額算定基準7頁「後遺障害等級3級以下の場合の将来介護費」)によると、過去の裁判の傾向として、上記3級では将来介護費を否定した裁判例はなかったとされる一方、後遺障害の程度が低くなるにつれて将来介護費の請求が認められない事案が生じ、9級以下の事例では将来介護費を認めた裁判例はなかったとされています。

また、将来介護費の金額についても、後遺障害の程度が低くなるにつれて、低下する傾向にあるとされています。

⑷ 具体的な金額ですが、専門の介護職に依頼しており、その費用が不相当ではない場合には、当該費用がそのまま認められます。

一方、被害者のご家族による介護がされている場合には、障害の程度により、日額8000円から10000円の範囲で認められる傾向にあるとされています。

3 高次脳機能障害における将来介護費の特徴

高次脳機能障害に対する介護は、脳以外の身体機能が損なわれることによる介護、即ち身体動作に対する介護のほかに、身体機能は正常であっても、脳機能の障害により適切な行動がとれないことに対する「見守り」「声かけ」が必要とされることによる介護を要する場合があります。

「見守り」「声かけ」の介護の場合、業者ではなくご家族が行うことが多いことと、「見守り」などが常に必要とされるかどうかは事案によることなどから、認定額が低くなる傾向にあります。

4 当法人にご相談を

将来介護費の請求には、目には見えない障害の程度を正確に伝えるにはどうしたらよいかという問題や、将来という不確定な事実であるにもかかわらず、必要な介護費をどのように認定するのかといった、難しい問題があります。

当法人には、高次脳機能障害に対応できる弁護士及びスタッフがおりますので、介護費についてお困りの方もご相談ください。