交通事故による『高次脳機能障害』は弁護士法人心まで

「高次脳機能障害の損害賠償金(示談金)」に関するQ&A

後遺障害による逸失利益とは,どういうものですか?

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高次脳機能障害による逸失利益

  • 文責:弁護士 上田佳孝
  • 最終更新日:2022年1月18日

1 高次脳機能障害と逸失利益

事故時の頭部受傷が原因となって高次脳機能障害となり、これが治癒せずに後遺障害として残った場合、後遺障害の程度(等級)に応じ、労働能力の低下や喪失が生じるものとされています。

そして、症状固定時(事故後に治療を継続したものの、これ以上の改善が見込まれないとされた時点)において、被害者が労働に従事し、あるいは将来従事することが予定されていた場合(例:被害者が未成年者である場合など)には、後遺障害がなかった場合と比較して、労働能力の低下及びこれに伴う減収が生じることとなりますが、この減収を逸失利益(後遺障害が残らなければ得られたであろう利益)といいます。

2 逸失利益の算定方法について

⑴ 高次脳機能障害による障害等級は、障害の程度により、1級ないし3級、5級、7級及び9級のいずれかに該当するとされています(自賠責の基準。労災の基準では、さらに12級及び14級にも該当する場合があるとされています。)。

そして、それぞれの等級ごとに、所定の労働能力喪失率が規定されていされています。

特段の事情がない場合には、事故前の被害者の年収に、労働能力喪失率及び労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数を乗じて、逸失利益を算定するのが一般的です。

ライプニッツ係数とは、将来の利益を先取りすることに伴う利得分を調整するための係数です。

例えば、5年間の労働能力喪失期間がある場合、年収×5年間(5倍)の金額が逸失利益となるのではなく、ライプニッツ係数(5年間の場合、令和2年4月1日以降に生じた事故であれば4.5797)を乗じることにより、上記5年間(5倍)を乗じるよりも少ない金額にとどめることとされています。

⑵ 上記⑴における算定方法は、従前、被害者が稼働し収入を得ていた場合のものとなります。

では、業務や職場の特殊性などにより、後遺障害発生後も収入に変動がなかったり、高齢であるなどの理由により事故前及び事故後のいずれも無収入であった場合にも、逸失利益は発生するでしょうか。

これらの場合は、いずれも事故前後の減収が生じていないことから、逸失利益は発生しないのではないかということが問題となります。

これについては、手がかりとなる2つの最高裁判例があります。

要約すると、上記の原則のとおり、減収の存在が逸失利益発生の要件である(減収の事実がないのであれば逸失利益は発生しない)としつつも、減収が生じていない理由が本人の努力など事故とは別の原因にあり、この原因がなければ減収が生じていたと認められる場合や、職業の性質に照らし、将来的に昇給、昇任等に対して不利益を受けるおそれがある場合など、後遺障害により被害者に経済的不利益が生じる特段の事情がある場合には、減収の事実がなくとも逸失利益の発生を認める、というものです。

ただし、実務では、上記の場合に、労働能力喪失率について、通常の基準よりも低い喪失率とすることで、損害(金額)を抑えることが多いようです。

また、業務の実態や、将来的に予想される不利益について立証する必要があります。

3 逸失利益のご相談は弁護士へ

逸失利益の算定に際しては、上記のとおり、将来の予測など立証が容易ではない事項についての検討が含まれることがあります。

当法人には、上記算定に対応することができる弁護士及びスタッフがおりますので、お困りの際は、ぜひ私たちにご相談ください。